デニムはストレッチ性が高いと劣化する?素材のお話

ストレッチデニムは、ヴィンテージとしての価値が低いと言われることがあります。

「劣化しやすい」というのが主な理由ですが、その鍵を握っているのはポリウレタンという素材です。

ポリウレタンのメリットとデメリットをご紹介しますので、デニム選びの参考にしてください。

後半では、デニムの違いを見分ける方法についてもお伝えします。

ストレッチデニムはメリットばかりではない?

ストレッチデニムは、綿(コットン)にポリウレタンやエラステンなどの素材を混ぜて作ったものです。

綿だけのジーンズは、細身のものを選ぶと動きにくいですが、伸縮性の高いストレッチ素材なら脚にフィットし、動きに合わせて伸びてくれます。

全体的にフィットするスキニーだけでなく、部分的にフィットするベルボトムや細身ストレートなどでもストレッチ素材が使われています。

脚にフィットしたデニムには脚長効果がありますし、ゆったりシルエットのトップスに合わせるとバランスよく見えます。

また、ポリウレタンなどが、どの程度含まれているかということによって、伸縮性が変わってきます。

例えば、「綿90%・ポリウレタン6%・その他4%」のデニムと、「綿70%・ポリエステル25%・その他5%」のデニムでは、後者のほうがよく伸びるでしょう。

ただし、ストレッチデニムには下記のデメリットがあります。

・脚やヒップのラインが分かりやすいので、体が引き締まっていないと穿きにくい

・キツすぎると動きにくい

・重ね着しにくいため寒い季節は辛い

・ストレッチデニムばかり穿くと、股関節に影響が出ることもある

この他にも、「ポリウレタンは劣化する」という理由で、綿100%のデニムしか買わない人もいるようです。

どういうことなのか、次項でご説明します。

ストレッチ性を高めるポリウレタンはデメリットもある素材

ヴィンテージデニムには、長い年月を重ねてきた味わいがあります。

オンリーワンの存在感を持つデニムを育てていきたいと思えば、素材のことが気になるのは当然でしょう。

ストレッチ性の高いポリウレタン混紡デニムは、劣化が早いといわれます。

ポリウレタンには、軽い、伸びる、クッション性が高いなどのメリットがある一方で、

・熱に弱い

・水分や紫外線で劣化しやすい

・微生物の影響を受けやすい

などのデメリットがあるのです。

50度くらいまでは耐えられますが、60以上の高温に弱く、アイロンや乾燥機を使うとダメージが進んでしまいます。

デニムの世界では価値の高いダメージと、そうでないダメージがあります。

熱によってポリウレタンが劣化したデニムはみすぼらしく見えますので、価値が上がることはないでしょう。

デニムの素材について詳しく知ろう!劣化しにくいストレッチデニムも

ポリウレタンが水分と反応して経年劣化することを「加水分解」と呼びますが、すべてのポリウレタンでそれが顕著に現れるというわけではありません。

ポリウレタンには、エーテル系とエステル系があり、エーテル系なら加水分解しにくいといわれています。

エーテル系は微生物が原因の分解も起こりにくいため、比較的、経年劣化しにくいと考えられます。

ただし熱には弱いので、アイロンや乾燥機の使用は避けるべきです。

このようにご紹介すると、いかにもポリウレタンが悪者のようですが、実際には、ポリウレタン製品でも劣化しにくいものはあります。

10年以上穿いているストレッチデニムでも、ポリウレタンの劣化で起こるベタベタ感や異臭を感じないことがあるようです。

その理由として考えられることを挙げてみました。

・エーテル系ポリウレタンが使われていた

・ポリウレタンの量が少なかった

・大切に着用されていた

・保管状態がよかった

・あまり着なかった

ポリウレタンが多く含まれたデニムやリュック、スニーカーなどが、使っているうちにボロボロになることはあります。

しかし数%しか混ざっていないものであれば、大切に着ることで寿命を延ばすことができるでしょう。

ちなみに、「ポリウレタン2%」という素材は、デニムのワイルド感をそこなわない比率だといわれています。

ダメージ加工にも強い、人気の比率です。

デニムは素材にかかわらず「伸び」が起こる

ポリウレタン混紡デニムを、「伸び」によって形が崩れると思い、避ける人もいます。

確かにストレッチ素材のものは、使い続けるうちに伸びていきます。

とはいえ、綿100%であっても伸びは起こります。

綿は洗濯すると縮みやすいため、あまり伸びないと思われがちですが、いつまでも元の状態に戻れるわけではないです。

新品ならではの張りは失われ、やわらかい質感になっていきます。

ポリウレタンでも綿でも伸びは起こりますし、それに愛着を持つ人もいるでしょう。

加水分解などの無残な劣化とはちがい、デニムの伸びは魅力につながるものです。

伸びるということが、デニムのデメリットとはいい切れないということですね。

ポリウレタンのデメリットとして特に挙げられるのは加水分解ですから、その点は考慮してデニムを選ぶことをおすすめします。

高級な商品なら必ず素材を確かめてくださいね。

フリマアプリやオークションで高額なデニムを買うときも、商品説明や画像をしっかりと確かめましょう。

また、安価な商品でも、ポリウレタンでコーティングされたようなものは避けてください。

デニム選びはココを見て!

ストレッチデニムの注意点をお伝えしました。

デニムは長く愛用することで本当の価値に気がつくことができるので、素材をしっかりとチェックして、それに合った扱い方をしてください。

ここからは、デニム選びにこだわるための豆知識をお伝えします。

●生地を裏までチェック

デニムの裏を見ると、横糸をチェックすることができます。

横糸に白い綿を使い、デニムの風合いを強調しているのはヴィンテージ好きな人におすすめです。

表には、白の糸とインディゴの糸との微妙なコントラストが見えて、何ともいえない味わいがあります。

色落ちすると、カジュアルで男前なイメージが強くなりますね。

一方、横糸が茶色など暗い色合いだと、表から見たときにインディゴと馴染んで上品な雰囲気になります。

デニムをきれいめに穿きたい場合は、こうした暗い色の横糸が使われたものが選ばれるでしょう。

素材の産地・織り方をチェック!

●デニムの産地はどこがいい?

イタリア、アメリカ、日本。

デニム素材の生産地はどこがいいのか迷ったら、下記を参考にしてください。

・イタリア

丁寧な仕上がりで、加工しやすいデニムが多いです。

「イタリア製」というだけでおしゃれなイメージもありますね。

・アメリカ

デニムに対する並々ならぬこだわりを感じる国です。

サンフォライズド加工(縮むことを踏まえて元から縮ませておく加工)などが代表的です。

・日本

細かく丁寧に作られるものが多いです。

さまざまな技術力が高く、バランスがいいのも魅力です。

●綿の産地はどこ?

とことんこだわって選びたい人は、デニムの糸の生産地を意識します。

デニムに使われる綿の繊維は、産地によって長さが違うからです。

長いほど光沢感が増し、短いとザラッとして深みのある印象を与えます。

ワイルドな経年劣化を楽しむなら、ストレッチ性が低く、繊維が短いデニムのほうがいいかもしれません。

例えばインド綿は繊維が長く、アメリカやアフリカは比較的短い繊維が使われます。

●織りの向きをチェック

デニムに使われる糸は左撚りは主流です。

織り方が、その糸の性質と合ったものは右綾(みぎあや)、逆向きに織られたものが左綾(ひだりあや)です。

右綾は硬く締まった印象で、左綾はやわらかくふんわりした印象です。

一生モノとして着るなら素材に注目

ストレッチデニムは、ポリウレタンが混ざっているため熱や水、光、微生物に弱いです。

アイロンをかけたり、高温になる乾燥機で乾かしたりしないようにしましょう。

世代を超えて着るようなヴィンテージデニムなら、綿100%やそれに近いデニムがおすすめです。