寒い季節には暖かいセーターが恋しくなりますよね。
「ニット」という呼び方をする方もいますが、セーターとニットの違いは何なのでしょうか?
また、動物性天然繊維と化学繊維など、セーターの素材によって、暖かさやお手入れの仕方なども違います。
今回は、暖かいセーターの条件や、その理由についてご紹介しましょう。
「セーター」と「ニット」の違い
寒い季節に着る、毛糸で編んであって頭から被って着る「セーター」ですが、これを「ニット」と呼ぶ方もいます。
「セーター」と「ニット」は、同じものなのでしょうか。
ニットとは、針を使い1本の糸を輪っか(ループ)にしながら、編まれた生地のことです。
その素材を使って作るのが、セーターです。
つまり、ニットは素材で、セーターは衣類の種類です。
したがって、カーディガン・マフラー・手袋・帽子・靴下・肌着など、ニット素材で作られたものは、セーターに限らず、総称してニットと呼ぶことができます。
ニットには多種多様な形状があるので、セーターだけでなく、靴下や肌着などにも使われています。
また、ニットを編むときの糸の繊維によっても、その種類は細かく分類されます。
【動物性天然繊維】
・ウールニット/羊毛
・ラムウールニット/仔羊の産毛
・カシミヤニット/ヤギ(カシミヤゴート)の毛
・アンゴラニット/アンゴラウサギの毛
【化学繊維】
・アクリル/羊毛に似た化学繊維
・レーヨン/木材パルプ
・ナイロン/絹のタンパク質に近い物質の合成繊維
このように、ニットにはさまざまな種類があり、繊維によって、暖かさや着心地、肌触りの良さなどが、大きく違ってきます。
暖かいセーターを選ぶときには、まずニットの素材を確かめることが大事です。
暖かいセーターの条件とは?
寒い季節に着るセーターは、暖かいものが良いですよね。
それには、暖かいニット素材を選ぶ必要があります。
暖かいニットとは、「保温性」「吸湿性」「通気性」が優れていることです。
多くの空気を取り込み、空気の層を作ることで暖かさを保つ「保温性」、寒くても汗はかくので湿気を吸う「吸湿性」、そして吸った湿気を外に出す「通気性」、この3つが暖かい素材の条件です。
さきほどご紹介した、「ウール」「ラムウール」「カシミヤ」「アンゴラ」などの、動物性天然繊維は、この3つの条件をクリアしている暖かいニット素材です。
アクリルなどに代表される化学繊維は、見た目は動物性天然繊維とほとんどかわりません。
しかし、吸湿性が低いこともあり、暖かさは動物性天然繊維には及びません。
これらのニット素材のセーターを選ぶときのポイントは、「ゆったりサイズ」を選ぶことです。
ぴったりサイズでも良いのですが、ゆったりサイズでしたら、空気をたくさん取り込めるのでより暖かくなります。
また、糸の細さも暖かさのポイントです。
糸が細ければ、それだけ編んだときに空気を溜めることができるからです。
天然繊維の素材で作られたセーターが暖かい理由
では、動物性天然繊維と化学繊維には、吸湿性の他にどんな違いがあるのでしょうか。
まずは、動物性天然繊維について見ていきましょう。
ウールやカシミヤ、アンゴラなどの動物性天然繊維は、その種類に関わらず、表面がうろこ状で縮れているという特徴があります。
この表面のうろこ状と縮れが、「吸湿発熱効果」と「断熱効果」を生むので、動物性天然繊維は暖かいのです。
表面のうろこ状のことを「スケール」と呼びますが、スケールが繊維の表面を毛羽立たせ、汗などの湿気を取り込みます。
取り込んだ湿気(=気体)をスケールが液体化するのですが、この気体が液体になるときに放出される「凝縮熱」によって暖かくなるのです。
凝縮熱は気体が液体化するときに発生する熱ですから、スケールが湿気を取り込みきってしまえば発生しません。
しかし、スケールが乾燥すれば、また熱を発生させることができます。
次に繊維の縮れですが、これは「クリンプ」と呼ばれています。
このクリンプがあることで、空気をたくさん取り込むことができるのです。
動物性天然繊維で作られたニット素材は、縮れている細い繊維をより合わせて作った糸が複雑にからみ合い、繊維そのものの空気や、絡み合ったことで含まれる空気などを取り込めます。
空気は動かないことで、高い断熱効果が得られます。
そのため、より多くの空気を抱き込めるニット素材は、保温効果が高く、熱を逃がしにくいのです。
そして、このようなニット素材で作られたセーターは、空気の断熱膜を着ることになるので、暖かいというわけです。
化学繊維のニット素材の特徴は?
次に、化学繊維のニット素材について見ていきましょう。
さきほど、「吸湿性が低いので、動物性天然繊維のほうが暖かい」とお話ししました。
確かに、セーターの素材でよく目にするアクリルを例に挙げて見てみると、「吸湿性が低い」「汗を吸わない」という特徴があります。
吸湿性がないと、汗をかいたときに蒸れたり、汗冷えしたりしてしまいます。
つまり、化学繊維も多少のクリンプはありますが、動物性天然繊維のようなスケールがないので、湿気を熱に変えることや空気を取り込んで保温しにくい、ということです。
また、吸湿性が低いことで、乾燥し静電気が起こりやすく、ホコリも付きやすいです。
その他にも、化学繊維は熱に弱いので、摩擦が起きると毛玉になりやすいという特徴があります。
ちなみに天然繊維は熱に強いので、毛玉になりにくく、毛玉になっても落としやすいです。
こうして比べて見ると、化学繊維は不利なようですが、動物性天然繊維にはない大きなメリットもあるので挙げておきましょう。
・保温性が高く、耐久性に優れている。
・ウールなどの天然素材に比べてとても安い。
・虫食いやカビの影響をほとんど受けない。
・吸水性が低いので、乾きやすい。
・鮮やかな染色加工ができる。
このような特徴から、色がきれいでお手頃な値段のセーターは、化学繊維ものが多いと言えるでしょう。
素材のせい?暖かいはずのセーターが暖かくない?
動物性天然繊維の素材で作られたセーターのほうが、化学繊維に比べて暖かいことはお分かりいただけたと思います。
どちらの繊維で作られたものであっても、長く着ていると「買ったときに比べて暖かくなくなった?」と感じることがあるでしょう。
その原因は、セーターに付いた「汚れ」です。
セーターは、下着やTシャツなどのように、そう頻繁に洗うものではありません。
汗をかく季節に着ないですし、目立ったシミや汚れも付いていないと、「あまり汚れていないのでは?」と思われる方も多いでしょう。
しかし、セーターを着ることで、知らずのうちに全体に汚れが溜まってしまいます。
そして、全体的に汚れていると、汚れが目立たず、「汚れていない」と勘違いしてしまうのです。
天然繊維の場合、セーターの繊維の奥まで汚れが付いてしまうと、スケールやクリンプが上手く機能できなくなり、暖かさが半減してしまいます。
化学繊維の場合も汚れが付いてしまうことで、クリンプの機能が下がり、保温効果が低下します。
セーターが洗濯で縮んでしまう理由
前述したように、暖かいセーターの状態を保つには、汚れを落とすことが大事です。
セーターのお手入れは、素材にもよりますが、洗濯機で手軽に洗えないので大変ですよね。
また、洗い方によっては縮んでしまうこともあるので、注意する必要があります。
動物性天然繊維の場合、セーターが洗濯によって縮んでしまう原因は、毛糸の表面を覆っているスケールにあります。
動物性天然繊維は、人間の髪と同じようにたんぱく質でできていて、スケールは髪のキューティクルのように、水に濡れるとうろこが開きます。
うろこが開いた状態のときに、回転させたり、揉んだりすることで、うろこ同士が絡み合ってしまい、ギュッと縮んでしまうのです。
そのため、自宅でセーターを洗濯するときは、水に浸ける時間をできるだけ短くして、手で押し洗いをしましょう。
化学繊維の場合は、動物性天然繊維ほどではありませんが、縮れた糸を編んで作っているニット素材に変わりはないので、目が詰まって縮んでしまうことがあります。
洗濯機によっては、セーターなどのニット素材を洗えるものもありますが、回転による摩擦がかかってしまうので、手洗いをおすすめします。
また、既製品のセーターは多くの場合、着たときのヨレを防ぐために、スチームアイロンなどで繊維の縮れを伸ばしてから出荷しています。
したがって、既製品のセーターをやさしく押し洗いをしても、繊維は縮れを伸ばす前の形に戻ろうとするので、多少の縮みが発生します。
洗濯して縮んでしまったセーターは、伸ばしたい方向にひっぱりながらスチーム(蒸気)をかけると、多少戻ります。
このとき、スチームアイロンのスチームだけをかけてください。
アイロンを押し当ててしまうと伸ばし過ぎてしまうので要注意です。
セーターは素材によって使い分けよう
このように、動物性天然繊維と化学繊維には違いがあります。
動物性天然繊維で作られたセーターは暖かいのですが、縮みやすいので洗濯などお手入れが大変です。
一方、化学繊維で作られたセーターは、お手頃な値段で虫食いやカビが発生しにくく、乾きやすいなどなど、お手入れが比較的楽です。
どちらの素材も一長一短なので、お出かけには天然繊維、普段着は化学繊維など、着るシーンに合わせて使い分けると良いでしょう。