デニムのもうひとつの顔「バックポケットステッチ」の魅力

デニムにはいくつかのポケットが付いています。

バックポケットがふたつ、フロントポケットもふたつ、そして右のフロントポケットのなかにウォッチポケットと、合計5つのポケットがあります。

なかでもバックポケットは、メーカーによってステッチのデザインが異なるため、デニムのもうひとつの顔とも言えます。

今回は、デニムのバックポケットステッチについてご紹介しましょう。

デニムのバックポケットステッチのはじまりは「リーバイス」

デニムパンツの生みの親は、アメリカの「LEVI’S(リーバイス)」だと言われています。

1870年にカウボーイや炭坑夫などの作業着として販売されたもので、機能性を重視し、当時の技術と知恵を最大限に活かしたものでした。

例えば、独特な色を生み出すインディゴ染料は、虫除けや蛇よけの効用があるとされています。

また、デニムには5つのポケットが付いていますが、これは作業効率を高めるために備えられたものです。

しかし、破れやすかったので、リーバイスがリベットと呼ばれる金具を付けて、ポケット部分を補強しました。

今では実用性というより、飾りのようになっているリベットですが、ヴィンテージものには、裏側から打ち込まれた「コンシールドリベット」、別名「隠しリベット」と呼ばれる仕様のものがあります。

これは、馬や車に乗るときリベットが当たって傷つかないようにするためで、のちにステッチによる補強へと変更されることになります。

その後、数多くのデニムパンツが生み出されますが、リーバイスのデニムパンツが基本となり、今でもポケットは5つです。

1873年、リーバイスはバックポケットをステッチで、ポケットの入り口をリベットで補強したデニムパンツの特許を取得します。

このとき採用された二重アーチ状のステッチ「アーキュエイトステッチ」は、リーバイス製であることを示す、シンボルステッチになりました。

これが、バックポケットステッチのはじまりです。

バックポケットステッチはデニムのもうひとつの顔

リーバイスでは、ポケットの補強をするために施されたバックポケットステッチですが、その後、多くの類似品が出回ることになります。

そこで、リーバイスはこのバックポケットステッチを、1943年に商標登録します。

このことにより、「アーキュエイトステッチ」の施されたデニムは、リーバイス製であることが保証されることになりました。

アメリカではリーバイスの他に「Lee(リー)」と「Wrangler(ラングラー)」があり、3大デニムメーカーと言われています。

リーのバックポケットステッチは波線状で、デザインのモチーフは、カウボーイに愛されたリーらしく、ロングホーンという牛の長い角を表したものです。

横向きのSのような形状をしています。

しかし、Sが怠けて寝ているように見えることから「レイジー(怠け者)Sステッチ」と呼ばれています。

ラングラーのバックポケットステッチは、Wranglerのイニシャル「W」を表していていますが、Wを発音しないことから、「サイレントWステッチ」と呼ばれています。

このように、各メーカーによってさまざまなステッチが施され、ステッチを見るだけでどこのメーカーかわかるため、バックポケットステッチはデニムのもうひとつの顔なのです。

メーカーの数だけあるデニムのバックポケットステッチ

それでは、他のデニムメーカーのバックポケットステッチを見てみましょう。

【EDWIN(エドウィン)】

ラングラーと同じWの形をしていますが、エドウィンの方が丸みを帯びていて、ソフトなイメージです。

【american eagle(アメリカンイーグル)】

アメリカンイーグルは、メンズとレディースでステッチが異なります。

メンズは、ラングラーやエドウィンと同じようにWのステッチですが、アメリカンイーグルの場合は、とても浅いWです。

レディースは、真ん中に1本の線が入っているデザインで、そのすぐ下に「2」を崩したような左右対称の線が重なっています。

【G-STAR RAW(ジースターロウ)】

もともと、バックポケットの補強のために施されたステッチなので、ポケットを横断するようにデザインされたものが多いのですが、ジースターロウは違います。

デニムの脇から内側に向かって3分の2ほど、アーチ状のステッチが施されています。

後ろ姿が笑っているようにも見える、ユニークなデザインです。

凝ったデザインのバックポケットステッチ

デニムの少し凝ったデザインのバックポケットステッチをご紹介しましょう。

【Nudie Jeans(ヌーディ―ジーンズ)】

多くのバックポケットステッチが2本のステッチで施されているなか、ヌーディ―ジーンズは6本ものステッチを使っています。

6本のステッチがポケットの真ん中でうねるようなデザインで、遠くから見てもすぐにわかるようなインパクトがあります。

【ROXY(ロキシー)】

2本のステッチが、真ん中でくるりと1回転しているデザインです。

糸の色を変えているバージョンもあって、かわいらしいイメージのステッチです。

【ARMANI JEANS(アルマーニジーンズ)】

ステッチ自体は単純なデザインで、真ん中が少しだけ山型になっています。

その山型の上に、小さなアルマーニのエンブレムが付いているのが特徴です。

ステッチがなくエンブレムだけのものは、エンポリオアルマーニかアルマーニコレツィオーニです。

【AGJEANS(エージージーンズ)】

2本のステッチで、山とそれに向かう波を表しているような凝ったデザインです。

メーカー名の「A」と「G」を組み合わせたようにも見えます。

日本のデニムはバックポケットステッチが個性的

世界中に広まっている日本製のデニムには、個性的なバックポケットステッチがたくさんあります。

【WAREHOUSE(ウェアハウス)】

リーバイスに似たステッチもありますが、ステッチを組み合わせてメガネのようなふたつの円がデザインされているバックポケットステッチもあります。

【EIGHT-G(エイトジー)】

シリーズによってバックポケットステッチが異なっていて、ゼロシリーズのステッチは、少し丸みを帯びた線なのですが、真ん中で小さな折り返しがあり、それがアクセントになっています。

男デニムシリーズは、ポケットの左右から、幅の広い2本のステッチで半円を描いたデザインです。

右ポケットの下には、ブランドロゴが縫い付けられていて、とても印象的なバックポケットステッチになっています。

【桃太郎ジーンズ】

桃を思わせるような丸いラインが大胆にデザインされています。

2本のステッチが、下の方で少し重なるようになっているのが個性的です。

【サムライジーンズ】

鳥が羽を広げてこちらに向かってくるようなデザインです。

フリーハンドで書いたような、左右非対称の羽と、羽と羽の間にある少し太めの短いステッチが、鳥の頭のように見えます。

ステッチなしのデニムのバックポケット

前述したように、デニムのバックポケットステッチは、作業するときに破れやすいので、それを補強するために作られたのがはじまりでした。

しかし、今ではデニムパンツは作業着ではなく、ファッションアイテムのひとつとなり、バックポケットステッチはメーカーの顔としての役割の方が大きくなっています。

日本のデニムブランド「EVISU(エビス)」は、ステッチではなく、ペンキペイントでステッチ模様を書いてヒットしました。

バックポケットに白いペンキで「M」のように書かれたカモメマークは、創業をはじめた大阪の戎さまに由来したものだと言います。

ポケットからはみ出すように裾に向かってペイントされているものもあり、個性的でとても目立つデニムとして一世を風靡しました。

さきほどご紹介した、「桃太郎ジーンズ」にも同じように、ペイントを施したものがあります。

「出陣LABEL」というもので、オーダーになりますが、太さの違う2本の線がペンキで引かれたものです。

ペイントには、家紋、市松などの柄物があり、桃太郎や般若などのイラストのペイントも行っています。

バックポケットステッチもファッションのひとつ

このように、バックポケットに施されたステッチには、さまざまなものがあるので、ステッチを見るだけで、そのデニムがどこのメーカー、どのブランドのものか分かります。

今では、バックポケットステッチはファッションの一部と言っても良いかもしれません。

そんな個性的で目立つステッチを、ファッションに上手に取り入れることで、おしゃれ度をアップさせましょう。