デニム生地の特徴!それは染料のインディゴと生地の綾織!

気軽に穿けて、丈夫で便利なデニム地のジーンズ。

しかし一方で、生地の表と裏で色が違っていたり、色落ちが激しいなど、他の生地とは異なる性質にも気が付きます。

また、ヴィンテージのジーンズはコレクターの間で高額で取引されているという一面も持っています。

デニムという生地とは一体何者なのかということを、その歴史と特徴からご紹介しましょう。

デニムという生地

デニムと聞いて、ジーンズを思い浮かべる方は多いでしょう。

人によっては「デニムとジーンズは同じもの」と考えている方も居るそうです。

端的にお伝えすると、ジーンズに一般的に使われている生地を指してデニムと呼びます。

そして逆に、デニムの生地で作られたパンツのなかで代表的なものがジーンズです。

デニムは生地の名前、ジーンズはパンツの種類の名前、せっかくなので正確な定義もしっかり押さえておきましょう。

そもそものデニムの語源は、フランス語の「セルジュ・ドゥ・ニーム(serge de Nîmes)」と言われています。

15世紀の頃、イタリアの港では船の帆や港内の物資をカバーするために、厚手のモールスキン生地をインドから輸入したインディゴで染めて使用していました。

しかし、フランスにあるニームのアンドレ族が作る綾織が非常に丈夫であったため、モールスキンの代わりにインディゴで染めて使用されるようになりました。

こうして港でよく見かけるようになったニーム産の綾織は、「ドゥ・ニーム(de Nîmes)」と省略されて、最終的に「デニム(denim)」になったそうです。

つまり、デニムの特徴はインディゴと綾織によるものなのです。

そしてジェノバでは、丈夫なデニム生地を使って船乗りたちのパンツを作るようになりました。

ジェノバはフランス語では「ジェーヌ(Gêne)」であり、ジェノバから来た船乗りたちが穿いていたパンツは「ジェンズ(Genes)」と呼ばれました。

この「ジェンズ」が次第に「ジーンズ」へと変わっていったと言われています。

つまりニーム産の綾織で出来たジェノバパンツが、「デニム」の「ジーンズ」という組み合わせの始まりであったようです。

インディゴによる生地の特徴

ジーンズの原型は、ゴールドラッシュに群がる採鉱夫たちに衣服などを販売していた仕立て屋のヤコブ・デービスの手によって1870年に作られた「リベットで補強した作業パンツ」だったとされています。

その際に採用した生地は、リーバイ・ストラウス(リーバイスの創設者)から仕入れたキャンバス地で、染色をしていない生なりのままで使用されていました。

その時点では、まだジーンズという呼び方はされておらず、胸当てのないオーバーオール「ウエステッド・オーバーオール」と呼ばれていたそうです。

そこにインディゴによる染色が行われたのは、天然インディゴには、蛇が嫌がるピレスロイドが含まれていたからという説があります。

インディゴ染料には防虫効果もあり、生なりのキャンバス地と併売されていたインディゴで染められた「ジェンズ」のデニム地は、採鉱夫の間に瞬く間に受け入れられて行きました。

天然のインディゴは扱いに手間がかかることから高価で、1878年にドイツで合成インディゴが発明されると速やかに置き換えられて行きます。

リーバイスの「501」の成功を受けて各社から発売されるようになったジーンズの殆どには、合成インディゴが使われています。

合成インディゴには不純物が含まれておらず、当然、ピレスロイドも含まれていません。

どうやら、「青色はガラガラヘビが嫌う色」という俗説が採鉱夫たちに安心感を与えたことと、「ズボンの汚れが目立たない」というのが、受け入れられた理由だったようです。

「インディゴで染めて」、という表現を使いましたが、実はインディゴは染料ではなく顔料です。

粒子が大きいため、繊維の間にまで浸透させることが難しく、ロープ染色という表面に塗布して色付けをする手法が用いられています。

そして、デニムの綾織に使われるロープ染色された糸は、経糸にしか使われず、緯糸には染色加工をしていない、未晒糸が使われます。

緯糸の占める割合が広い、生地の裏が白いのはそのためです。

また、表現が擦れた時に出てくるデニムの特徴的味わいは、ロープ染色による糸が使われるためです。

デニム生地の仲間には、ダンガリーという生地が存在します。

デニムがインディゴ染色をした経糸と、未晒糸の緯糸を用いるのに対し、ダンガリーは経糸に未晒糸を、緯糸にインディゴ染色の糸を使います。

そのため、ジーンズでは縦向きに出てくる掠れが、ダンガリーでは横向きに現れます。

ダンガリーの語源は産地のムンバイにある「ダングリ」という地名で、デニム生地より薄手の生地として、シャツなどに使われることが多くなっています。

織り方による生地の特徴

デニムは「綾織」の生地です。

そこでまずは、綾織について知っておきましょう。

平織りが経糸と緯糸を1本ずつ交互に組み合わせて織るのに対して、綾織りでは経糸に複数の緯糸を跨がせるのが特徴です。

緯糸が、2本の経糸を跨いで1本分潜り、2本を跨いで1本分潜るを繰り返すように織ります。

例のように3本周期のものを「三つ綾」、3本跨ぎ1本潜りや2本跨ぎ2本潜りの4本周期のものは「四つ綾」と言います。

デニムの原型となったサージは2本跨ぎ2本潜りの四つ綾ですが、現在のデニムは同じ四つ綾でも、3本跨ぎ1本潜りの「ツイル」が一般的になっています。

緯糸をずらして行くことで現れる規則的な線は、斜紋線(しゃもんせん)または綾目(あやめ)と呼ばれます。

ツイルの綾目には、その畝の流れの向きによって「ライトハンドツイル(右綾)」と「レフトハンドツイル(左綾)」のものがあります。

デニムの表情を作る要素がもう一つあります。

それは、糸の撚り方です。

糸の撚り方向には、左撚り(Z撚り)と右撚り(S撚り)がありますが、単糸の場合には通常は左撚り(Z撚り)になります。

デニムは一般的にライトハンドツイル(右綾)で織られています。

左撚りの糸を右綾で織ると、糸の緩みが生地のザックリ感になって現れます。

この組み合わせが、リーバイスを始めとする多くのジーンズメーカーで採用されています。

逆に、レフトハンドツイル(左綾)で織ると、糸の撚りが締まって表面がフラットで綾目が目立つようになります。

この組み合わせの代表は、リーです。

1971年には、偏った綾目が捻じれを呼ぶことを嫌って、規則的に右綾と左綾を混在させたブルークンツイルも生まれました。

この織り方を最初に取り入れたのは、ラングラーでした。

デニムの特徴を活かしたダメージ

デニム生地はインディゴのロープ染色と綾織によって、表面に色落ちが発生しやすいという特徴を持っています。

色落ちは、その箇所によって出てくる形状が変わることから、それぞれに名前が付けられています。

・アタリ

ジーンズの外側の縫い目に沿ってできる縦の線が「アタリ」です。

・ヒゲ(下りヒゲ)

股の周囲に猫の「ヒゲ」のように放射線状に発生する色落ちのことです。

・縦落ち

インディゴで染められた縦糸の表面が擦れて芯の白地が出てきた縦の線で、洗濯を繰り返すだけでも出てくるものです。

また、穿いている人の個性を表現する「こなれ」のアピールのため、色々なダメージ加工が歓迎されています。

ダメージ加工には、ハサミやカッター、サンドペーパーなどを使います。

・横割れ

膝や太ももに、横に裂け目を入れることで、動きに合わせて肌やアンダーの色が露出するのを楽しみます。

・薄抜き

平面的な部分を面で薄くしてしまうことで、色の付いた縦糸だけにダメージを与えて白抜き部分を作ります。

・ヘリのクラッシュ

ウィスト部分や裾へのダメージや、ジッパーのフライフロントやポケットの角に作る擦り切れ加工です。

・裾のフリンジ

裾を縫わずに切りっぱなしの状態にして、フリンジ風にします。

生デニムとリジッドデニム

ジーンズ好きなら、「生デニム」や「リジッドデニム」という言葉を聞いたことがあるかも知れません。

リジッド(Rigid)というのは、「固い、硬直した」という意味で、糊付きで生地がパキパキした状態のデニムの特徴を指しています。

色落ちしやすいデニム地に穿く人毎の個性で「こなれ」を作ってもらうために、ジーンズは水洗いしないままで出荷されるものがあります。

糊付きパキパキデニムがリジッドデニムです。

このリジッドデニムには、更に2種類が存在します。

1つは、縫製したままの「生デニム」で、防縮加工すらされていません。

原材料のコットンは、糸にする段階と生地にする段階で引っ張られて伸びた状態にあります。

これが水を吸うことでほぐれて、生地自体を縮ませることになります。

縮みが激しいものは、2インチも丈を縮ませるといいます。

もう1つは、防縮加工だけを施してあるデニムで、こちらは洗濯後による色落ちはしても縮みはほとんどありません。

リジッドデニムという呼び方には、防縮加工を施しているものと生デニムの両方を含みますので、購入時には確認が必要になります。

紛らわしいことに、色の表記のように「リジッドカラー」という言葉が使われることがありますが、これも色落ち前のインディゴの色が保たれているということを表しているようです。

デニム素材の洗い方

色落ちを「こなれ」として楽しむデニム生地ですが、特に色落ちが激しいのは天然インディゴを用いたヴィンテージジーンズです。

天然インディゴは、1976年頃まで製造されていたリーバイスの「501の66前期モデル」まで採用されており、天然インディゴ特有の染めムラと共に味わいとして愛されています。

そのため、ヴィンテージコレクターの中には、その特徴を失わないために洗濯を嫌う人が多いのです。

しかしながら、洗濯をしないと皮脂や繁殖した細菌で、どんどん繊維の痛みが進むものです。

洗濯による色落ちを抑える方法を紹介しましょう。

インディゴ染料には油分が含まれており、洗濯用洗剤が油汚れとして染料を分解してしまいます。

この油汚れを分解する成分は、そのほとんどがアルカリ性です。

このアルカリ成分の中和には、酢が有効です。

さらに、色落ちしにくい状態を作るには、塩が効果を発揮します。

塩に含まれる塩化ナトリウムが、繊維と染料の結びつきを強くする媒介として働きます。

そこで、洗濯の際に少量の洗濯用洗剤に、お湯1リットルに対して酢と塩を大さじ1杯の割合で足して、つけ置き洗いをします。

水を替えながら完全にすすぎ終わったら、風通しの良い場所で陰干しします。

気難しいデニムだからこそ愛される

採鉱夫の作業パンツとして生まれたデニム地のジーンズは、気軽に穿けるボトムスです。

しかし、インディゴという顔料を使ったことにより、実は他の生地にはない気難しい一面も持っています。

ジーンズメーカーによる生地の違いは、選んだ綾織の種類によるものです。

世話の焼けるデニムですが、その扱い方を理解すれば、自分だけの表情を見せてくれる愛すべきアイテムです。