スカートに裏地や糸ループが付いているのはなぜ?役割は?

最近、スカートに裏地が付いていないものが増えています。

スーツや制服のスカートに裏地がついていないことも。

しかし、毛の素材のスカートは裏地がないと、ストッキングや肌にまとわりついて、生地の滑りが悪くなります。

そこで、毛素材のスカートには裏地が付いているものがあります。

スカートの裏時と表地の間には、裏地が動かないように糸ループというものが付いています。

なぜ、糸ループが付いているのでしょうか。

スカートの裏地と糸ループの関係についてお話をしましょう。

スカートに裏地を付けるのはなぜ?

スカートやワンピース、コートなどの表生地に使われる毛、つまりウールの素材のものには、よく裏地が付いています。

裏地が付いているのは、衣服を着やすくするためです。

毛の素材は、ほとんどが羊毛になりますが、中にはアンゴラウサギやアルパカといったものもあります。

長さは色々で、長めのものもあれば短いものもあります。

毛で作られた服は、ニットの他に冬のスカートやジャケット・コート・スーツ・ズボンなどがあります。

毛の生地は、目で見えないほどの短い毛が立っていることがあります。

それによって、生地に重厚感を与えたり、温かみを与えています。

毛100パーセント生地のズボンを長い間履き続けると、お尻の部分がテカテカに光って見えることがありませんか。

良くあるのは、男子学生の黒ズボンになります。

毎日自転車通学をしている学生は、お尻と自転車のサドルで摩擦が起きて、起毛の部分が寝てしまったり抜けてしまい薄くなります。

簡単にお話すると、毛のズボンやスカートは、人の頭髪と同じで抜けてしまうと地肌が見えてしまうのと似たような現象が起こるのです。

新しい毛のセーターやカーディガンはもちろん、スカートやズボン、ジャケットの上着でも毛の繊維は、起毛することで風合いを出しています。

起毛しているとどうしても衣服の滑りが悪くなります。

そこでジャケットなどの上着は、中に着るシャツやブラウス・ベスト・セーターとの滑りを良くするために裏地を付けています。

スカートも同じです。

しかし、肌が敏感な人の中には、この風合いが肌に直接当たるとチクチクした感じがして痛痒くなります。

裏地があることで、このチクチクした毛が直接素肌に当たることなくスカートを履くことができます。

スカートに裏地を付ける場合は、別の布が付いていることが目立つことがないようにしたいです。

そこで、スカートの表地と糸ループで繋げることで、外側から裏地が目立たないような工夫をしています。

スカートの裏地に糸ループが付いている理由

スカートを作る時に、表地は生地の幅やデザインによって1メートルから3メートルくらいまで用意することがあります。

デザインを生かすためなら、多めに生地を用意するのは仕方がないことです。

しかし、外側から見えない裏地に3メートル分を付けると、かえって歩行の邪魔になることもあります。

表から見えない裏地でも、お金はかかります。

無駄な量を使っても、生地代も勿体ないです。

そこで、裏地はタイトスカートと同じように、ギリギリの量で付けるのが一般的です。

表地は2メートル、3メートルと用意し、プリーツスカート・ボックスプリーツスカート・サーキュラースカート・ギャザースカートを縫っても、裏地は生地が少なめで作れるセミタイトスカート、フレアースカート分で充分です。

しかし、デザインが異なると、裏地が見えてしまうこともあります。

特にギャザースカートやサーキュラースカートの場合は、動きや空気の流れで裾が広がります。

それが女性らしいデザインを表すのですが、ふわっと裾が広がったときに、裏地が見えるのは格好悪いですね。

裏地がタイトスカートやフレアースカートの形をしていると、表地のスカートと同じ動きはしません。

そこで、裏地も表地に連動して動くようにしています。

その時に、表地と裏地をつなげるのが、糸ループです。

スカートの裏地に使われる生地

スカートの裏地にも色々な種類があり、滑りが良い生地もあれば、足にまとわりつきやすい生地もあります。

裏地でよく使われているのは、ポリエステルやキュプラ、レーヨンになります。

レーヨンはパルプ素材の再生繊維ですが、湿気に弱くしわになりやすいことがわかり、最近は単独ではあまり使われていません。

ほとんど綿や毛に混紡で使われています。

ポリエステルは、石油を原料とする化学繊維の代表です。

私たちが身に付ける衣服の大半が、綿またはポリエステルで作られています。

形状記憶やノーアイロンのワイシャツには、綿に合わせてポリエステルが入っています。

小学生や中学生が着る体育着も、最近は綿ではなくポリエステルになっています。

元々ポリエステルの生地は、吸水性・吸湿性が悪く下着や体育着にはむきませんでしたが、その性質を逆手に「撥水性」に優れた生地が作られています。

汗を吸湿するのではなく、そのまま通過させて撥水してしまうことで、いつまでもサラサラな風合いで着ることができます。

以前のポリエステルの裏地は、静電気が発生しやすく素肌にまとわりつくと不評でしたが、最近はポリエステル素材も優れたものが多く、裏地も変わってきています。

キュプラは、旭化成が「ベンベルグ」という商標で開発した人工絹糸です。

キュプラはレーヨンと違い、コットンリンターと呼ばれる綿を取った後の、綿の種子の周囲の繊維を使っています。

吸水性・吸湿性に富み、裏地の素材だけでなく、着物の長襦袢などにも利用されています。

汗をかいてもべたつくことがなく、静電気も発生しづらいため、スカートやコートの高級裏地として使用されています。

キュプラでもポリエステルでも、裏地はサラサラとして、光沢があり表地が素肌につくことを避けることができます。

裏地と表地は必ず糸ループで結び付けられて、滑りやすくしながらも、2枚に生地が離れないようになっています。

スカートの裏地と糸ループ

スカートの裏地は、表地と同時進行で作っていきます。

ほとんどスカートの裏地はセミタイトスカートの形で作ることができます。

例えばボックスプリーツスカートなら、表地を展開する前の原型にゆとり分を入れてスカートの裏地を作ります。

それでは、スカートの裏地の作り方です。

【作り方】

①裏地は、表地のセミタイトスカートを作るのと同じように、脇線を縫ってダーツを入れます。

この時、裏地のスカートの長さは表地のスカートよりも5cmほど短くします。

短くするのは縫い代を含めず、出来上がり分になりますので注意しましょう。

スカートの出来上がりの長さが55cm(縫い代を入れて58cm)なら、裏地は50cm(縫い代を入れて52cm)くらいにするとちょうど良くなります。

②脇線を縫う時、足さばきを良くするために裾から5~8cmほど開けて縫います。

裾ぎりぎりまで縫いません。

チャイナドレスのように、脇線が開くのをイメージしてください。

③ウエスト部分は表地と同じように、2~3cmの縫い代を余らせておきます。

ファスナーがつくときは、ファスナー分も表地のセミタイトスカートと同じようにします。

④ダーツと脇線が縫えたら、裾の開き部分を縫います。

脇の縫い代を開いて、開けた部分を裾から縫いどまりまでミシンで縫ってください。

巾着を縫う時に、ひもを通す場所をカタカナの「コ」の字を横向きに書くように縫い留めます。

これが上下逆になった形です。

⑤裾は、1cmの三つ折りにして、ミシンで縫います。

スカートの表地は、ロックミシンやかがり縫いで立ち目をかがってあります。

表地の裾は3cm上げて手縫いでまつり縫いをしておきます。

⑥ウエストベルトを付ける時に、表地と一緒に裏地も縫い付けてしまいます。

ファスナー部分も、表地を縫ったらそれに合わせて、裏側からファスナーをすくうように手でまつって縫い留めます。

⑦最後に、裏地の裾の開き部分と表地の脇線を、糸ループで留めます。

スカートの裏地の糸ループの付け方

それでは、スカートの裏地と表地を結ぶ、糸ループの付け方の説明です。

【糸ループの付け方】

①糸ループは、30cmくらいの手縫い糸を針に2本取りにして縫い付けます。

この時、糸ループはスカート裏地の開きどまりと、表地のスカートの脇線を縫い留めます。

位置的には、スカートの出来上がりの裾から10cmくらい上になります。

②玉結びをしたら、針でスカートの裏地の開きどまりをほんの少しすくいます。

③同じ場所をもう一度すくい、右手に針を持ち、左手で3本指が入るくらいの輪を作ります。

左手の指で、右手側の針についた糸を引くように通します。

ループは三つ編みのようになります。

④これを5cmくらいになるまで続けます。

⑤最後に、針を輪の中に通して、表生地に留め付けます。

表地に留め付ける時、最後の編み「ループ」の部分に糸を数回通します。

最後に表地の脇の縫い代の内側に玉留めをします。

針を輪に通したらすぐに編んだループの中に針を通しましょう。

そのまま留め付けないとループがほどけてしまうことがあります。

糸ループは両脇だけでも良いですが、サーキュラースカートや裾幅が広いスカートを作る時は、ファスナーの下、後ろ中心にも付けておくと安心です。

糸ループがいらないスカート裏地の付け方

スカートの裏地は、必ずしも糸ループが必要というわけではありません。

表地と裏地の形がほぼ同じ、セミタイトスカートやタイトスカートの場合は、糸ループなしでも、2枚の生地が離れることなく着用することができます。

セミタイトスカートは、ほぼ同じ形のものを表地と裏地で作ります。

スカートの脇線を表地裏地ともに縫ったら、表地と裏地の脇線を留め付けてしまいます。

この時、人台(ボディ)があると便利です。

人台に表地のスカートを裏返しにして履かせます。

表地の上に裏地を乗せます。

ここで待ち針やシルクピンで表地と裏地を留め付けて、人台から外します。

脇線を合わせて、表地の脇と裏地の脇を合わせて、捻じれないようにして脇と脇を合わせます。

表地と裏地の脇線がずれないように、開いた縫い代を縫い付けます。

縫う糸はしつけ糸や手縫い糸にします。

縫う場所は、縫い代の0.5~1cmくらい上を縫いましょう。

表からは見えませんので、ザクザクと2cmくらいの並縫いで大丈夫です。

縫うのは、ウエストベルトの付ける位置よりも3cmくらい下から、裏地の開きどまりまでです。

脇の縫い代は開くと左右2枚ずつの生地になりますが、前スカートの縫い代だけにします。

脇の縫い代を留め付けることで、糸ループを作る必要がありません。

スカートでは、この方法よりも糸ループの方が簡単なのであまり使われていません。

糸ループを付けないコートやジャケットの裏地は、このようにして留めておきます。

スカートの裏地に糸ループを付けよう

スカートは裏地があった方が、足さばきがきれいになります。

糸ループは、表地と裏地が離れないためには必要です。

裏地を付けたら糸ループを付けましょう。

糸ループは慣れると小学生でも付けることができるくらい簡単です。

ミサンガを作るような感覚で付けることができます。

購入したスカートに裏地はついているけれど、糸ループがない、糸ループが外れてしまったという時は、自分で簡単に付けることができますので、やってみましょう。