トップスの代表のシャツは、インナーにもなればアウターとしても使われます。
しかし、インナー使いのシャツと、アウターとしての役目を果たせるシャツには、根本から違いがあります。
アウター使いの襟付きシャツをジーンズと合わせるコツを知ることができれば、コーデの幅もグンと広がります。
シャツに対する理解から、始めてみましょう。
シャツの形による呼び方の違い
主にインナーとしての出番が多いシャツですが、その言葉はコートやジャケットのような上着ではない、トップスのほとんどを指しています。
上着を脱いで外出する季節にはトップスを担当するのはシャツだけとなり、ボトムスとのコーデを気にしない訳にはいかなくなります。
ボトムスに持ってきたジーンズによっても、組み合わせたいシャツは変わってきます。
今回は、Tシャツやポロシャツのようなプルオーバーのカットソーではなく、前開きで襟のついたものについて考えてみます。
その分類は、大きく分けて正装にも使われるドレスシャツと、そうではないカジュアルシャツに分けられます。
カジュアルシャツは更に、その用途や使われている生地の素材によっても名前を分けます。
それぞれの呼び方について、整理しておきましょう。
ドレスシャツという呼称は、カジュアルシャツという言葉への対義語として用いられます。
その実態は、ビジネスや礼装に使える襟のついた長袖シャツ全般で、ワイシャツやカッターシャツ、ブラウスとして呼ばれるものを含みます。
相手に対して誠実な印象を与える反面、消極的な印象です。
ビジネススラックスに合わせる用途のものが多いですが、シルエットを変えてジーンズなどにも合うようなものには、ドレスシャツの名前を使います。
対するカジュアルシャツには決められた形は無く、かしこまった印象はそれほどありません。
オックスフォードシャツは、キレイ目なカジュアルシャツの代表です。
経糸と緯糸を2本ずつ引き揃えて織ったオックスフォードクロスは、ふっくらとした通気性の良さが特徴の丈夫な生地です。
ボタンダウンシャツに使用され、アイビーリーガーが好んで着用したことから、アメリカントラディッショナルの定番アイテムとされています。
コットンパンツ、チノパンだけでなく、ジーンズとも相性が良いアイテムです。
一方、デニム地で作られたデニムシャツはワイルドな印象が加わります。
腰に巻いたり肩に羽織るだけといった使い方もできるため、着回しの自由度の高いシャツです。
同じデニム同士、ジーンズとは相性が良いのですが、安易に合わせると野暮ったくなるなど、デニムオンデニムは一筋縄では行きません。
チェックシャツには、無地のシャツとは違った味があります。
アロハシャツのような開襟でもくたびれた感じは出ませんし、逆にセミワイドカラーにしても硬苦しさが出ません。
チェックシャツから伝わる味の大部分は、チェックが作る柄と身幅によって決まります。
チェック以外にも、ストライプやドット、ペイズリーなどの柄もシャツの持ち味を変えてくれます。
変わり種のミリタリーシャツは、もとは軍隊用に開発されたワークシャツです。
デニムやシャンブレーのものが多いのですが、その特徴はポケットの数が多いことや、肩章が付いていることです。
カーキや深緑のミリタリーシャツは、デニムシャツとはまた違った印象を作ります。
色の差は、ジーンズとの相性にも良い方向に働きます。
ジーンズに合わせるシャツ素材
シャツには色々な形があり、それぞれのシャツで合わせやすいジーンズも変わってきます。
しかし、ジーンズに合わせやすいシャツと考えると、実はその形状よりも生地の素材の影響力の方が強いようです。
「ブロード」はコットン100%だったりやコットンとポリエステルの混紡がある、ビジネスシャツ向けの生地です。
色や青の無地で使われることが多く、糸の太さが細くなるほど肌触りが柔らかく、光沢を増すという性質があります。
「オックスフォード」もコットン・ポリエステルとの混紡ですが、こちらは独特な織り方のため、ザックリした風合いに織り上がります。
ブロードよりも太い糸を使うこともあって、適度な厚みと硬さがあり、通気性に優れていることからスポーツウェアにも用いられます。
「デニム」は、インディゴで染めた経糸に染色していない緯糸を綾織にした綿の素材です。
ウォッシュ加工や使い込みによる色落ちは、こなれ感として味わいを深めてくれます。
ダンガリーやシャンブレーは、デニムとは織り方の異なる兄弟のようなもの。
生地の持つ風合いの違いから、オックスフォード寄りの顔を見せるものもあります。
ポロシャツなどに使われる「鹿の子編み」は、表面に透かし目が作られるため通気性に優れています。
肌に触れる面積が小さいため肌触りがサラサラとしており、夏の衣料やスポーツウェアに使われることが多い素材です。
「フランネル」は、コットンやウールを使った毛織物で、長い毛足が触感の柔らかさと高い保温性を生み出します。
ネルシャツの「ネル」は、このフランネルのことです。
ニシンの骨という意味を持つ「ヘリンボーン」は、山と谷が交互に織られた独特の模様を持ちます。
コットン、麻、ウールなどで織られた生地は、柔らかい肌触りと英国紳士のような落ち着きと高級感を感じさせます。
皺になりにくく、スーツの生地などとしてよく使われています。
「リネン」は亜麻糸を使って織られた生地で、紀元前のエジプトですでに生産されていました。
吸水性が高く、汚れにくい、丈夫といった特性をもっています。
サラッとした清涼感を伴う肌触りが特徴で、夏には半袖のカジュアルシャツに使われる生地としてお馴染みです。
起毛素材の「コーデュロイ」も、特徴的な畝と独特の手触りで人気の素材です。
毛が長く保温性と保温性に優れているため、冬物のアイテムには欠かせません。
秋冬のコーデは暗めな色使いが多いために地味になりがちですが、そこに持ち込んだコーデュロイは素材自体をアクセントとして全体の印象を持ち上げます。
白シャツのジーンズコーデ
白シャツが持つ清潔感は、キレイ目コーデの武器です。
そして、白という膨張色がキレイ目コーデの基本シルエットであるYラインを作りやすくします。
トップスを大きめにボトムスを細身にという基本に従い、ビッグシルエットにはスリムかテーパードのジーンズが合います。
ジャストサイズの白シャツは、裾出しでラフにまとめましょう。
ダメージ加工のジーンズにも、白シャツを組み合わせれば清潔感を失わずにくつろぎ感が出せます。
白シャツと組み合わせた清潔感にジーンズの裾をロールアップさせて足首を出すと、爽やかさと軽快感を加えることができます。
長袖を腕まくりしても、半袖ほどカジュアルにはならずに知的な印象が残ります。
セーターやパーカーの襟元や裾から覗く白は清潔感を増しますので、崩し過ぎないコーデには便利な組み合わせです。
黒シャツのジーンズコーデ
黒シャツとジーンズのコーデでは、明暗のメリハリを作ることが大切です。
リジッドジーンズやワンウォッシュを合わせると、全体が暗く沈んでしまいます。
黒シャツには、程よく色落ちしたブルージーンズがぴったりです。
ブラックジーンズと合わせる時には、ブラウンのベルトを使ってトップスとボトムスの切り替えポイントを作ります。
シューズはジーンズと逆目で合わせ、ジーンズが暗色なら薄茶、カーキジーンズなら濃茶にすると同化しません。
インナーに白のTシャツを組み合わせると、黒シャツにも清潔感が足されます。
前を開けて着て、細みのジーンズの裾をロールアップすると、軽快な印象が出てきます。
黒は大人の色であると同時に夜の色でもあり、光り物のアクセサリーはキザに見えることもあります。
バッグもクラッチバッグなどは避け、持たないかショルダーやリュックを合わせてみましょう。
デニムシャツのジーンズコーデ
素材を合わせているにもかかわらず、意外に合わせるのが難しいのがデニムオンデニムです。
デニムシャツで作るデニムオンデニムは、通常ならデニムジャケットでの組み合わせを、デニムシャツを置き換えたもの。
上下のサイズ感やウエストラインの高さが変わってきます。
よく失敗してしまうのは、トップスとボトムスのトーンを揃えてしまうことです。
濃い色同士、淡い色同士で揃えると、トップスとボトムスが一つに繋がってしまいます。
そうでなくてもルーズなデニムが、メリハリも持たずに膨らんでしまうだけの結果になります。
同じトーンで揃えるには、それ意外の方法でのメリハリ作りが必要です。
前を開けてインナーを見せることで、インナーとボトムスの間に境界線をつくることができます。
ブルーデニムの組み合わせなら白のカットソーで、サックスデニムなら黒のカットソーで、視覚的な切り替えポイントを作ります。
デニム同士で合わせるのなら、上下でトーンを変えることです。
トーンの切り替わった高さでトップスとボトムスが分かれることになりますので、あまりに長い裾は脚を短く見せてしまいます。
デニムシャツの裾の長さも気になるところですが、デニムコーデ全体に気を付けたいのがサイズ感です。
デニムオンデニムにブカブカのオーバーサイズを持ち込んだ瞬間に、何十年もタイムスリップしたかのような中途半端な古臭さを感じさせてしまいます。
緩い印象のデニムだからこそ、上下ジャストサイズでタイトに合わせたIラインシルエットがおすすめです。
上下のトーンを変えるのは、色の濃淡だけではありません。
ホワイトジーンズやブラックジーンズ、カーキやベージュといった染色がされたものもあります。
色と濃淡を使って、デニムオンデニムを上手く割ってください。
あえてタックイン
ゆるい印象を持ったジーンズに組み合わせるトップスは、裾を出して着るものだと思い込んでおられる方も多いようです。
しかし、ゆるさが行き過ぎるのは「だらしない」印象を与えかねません。
ここで、あえてタックインの着こなしへの挑戦をおすすめします。
タックインは、トップスとボトムスの切り替えポイントが腰上まで上がり、腰下のラインが直線的になるなど、日本人にとってはありがたい面を持っています。
しかし、その組み合わせ次第で野暮ったさが半端ないコーデになってしまうこともご存知の通りでしょう。
タックインの例として、少し極端な組み合わせを2つご紹介します。
1つ目は、ビッグシルエットの白シャツと細みのジーンズの組み合わせです。
キレイ目コーデの王子ファッションになります。
ゆるくてラフなジーンズのコーデが、一気に清潔感と誠実を印象に加えます。
2つ目は、派手な色使いのネルシャルにレギュラージーンズの組み合わせです。
実はアメカジではお馴染みの組み合わせで、ワークシャツとしての使い方です。
最近のネルシャツは裾が短めのものが多いので、ワンサイズ上の物を選んでも良いかも知れません。
この2つの極端な例の間に、人それぞれのタックインルールが見つかる筈だと思います。
ザックリした生地のジャケットなどのアウターと組み合わせれば、更にハードルは下がります。
ゆるさと誠実のバランス
ゆるさを代表するジーンズに、シャツを組み合わせることで誠実を足して行くのがシャツとジーンズのコーデです。
それだけに、作り込んだバランスに自分がマッチしていないことには、決して格好良くは見えません。
見た目の印象で、相手は付き合い方のスタンスを決めます。
その期待に応えることこそが、大人の個性の作り方です。