まだまだ着られるけれど、黄ばみや色あせが目立ってしまい、着るのをためらうような洋服はありませんか?
思い入れのある物ですと、リメイクしてでも着続けたいものですよね。
また、リメイクすることで、よりおしゃれな洋服になって着るのがもっと楽しくなるかもしれません。
そこで、「染め直し」でリメイクするという方法があります。
布は黒に染めることで、デザインはそのままで黄ばみや色あせを目立たなくさせ、新しく生まれ変わります。
それでは、「染め直し」について見ていきましょう。
布を黒に染める「染め直し」とは?
「染め直し」とは、染め替えとも言い、着物などを別の色に染め直して、新しく生まれ変わらせる方法のことです。
染め直しの代表的なものは、生地の上から色を変える「色揚げ」、色を抜いてから新しい色に染め直す「抜き染め」、派手な生地に色を加えて地味にする「目引き」などがあります。
これは着物を染める技術ですが、洋服にも使えます。
染め直しをすると、黄ばみなどのシミ、色あせを目立たなくさせることができますし、違ったテイストの洋服になります。
特に黒色に染めるとその効果は抜群で、黄ばみや色あせを消し、全く違った洋服にリメイクすることができます。
しかし、擦り切れなどは布自体の劣化なので、目立たなくすることはできませんし、かえってそこだけ色味が違ってしまう場合があるので注意しましょう。
また、自分でも染め直しができる染料もありますが、色落ちや色移りを心配される方は、染め直しの専門業者に依頼することをおすすめします。
布を黒に染める奥深い日本の技術
染色の歴史は古く、中国では紀元前3000年頃から、インドでは紀元前2500年、ヨーロッパでも紀元前2500~800年頃から、盛んに行われていました。
日本の布を染める技術は独自のもので、有史以前からあったと言われています。
着物に使われている布を黒に染める技術は、「京黒染め」「水戸黒染め」などがあり、下地に色を入れる独特のものです。
【紅下 べにした】
黒染めの前に、下地を染めるのに紅色を用いる方法のことです。
まず、紅色の染料を白生地に重ねていき、下染めをしてから黒で染めます。
下染めをすることで同じ黒でも、いわゆるブラックではなく、色に深みや渋味がでて、重厚な黒になり、染め上がりの色艶も良くなります。
色落ちや変色などしないよう、堅牢度を高めるための工夫でもあります。
【藍下 あいした】
紅下と同じように、藍色に下染めしてから、黒で染めます。
江戸時代には女物は紅下、男物は藍下が使われていたようです。
現在は、多くの染色方法や合成染料がでてきたことから、このような手間の掛かる技術はあまり使われなくなりました。
しかし、黒紋付やジーンズの染色などにおいては、今でもこの下染め技術が使われています。
日本の技術を使って布地を黒に染める
このように、日本の染色技術には独特のものがあります。
紅下や藍下を用いるわけではありませんが、日本の染色技術を生かして洋服を染めると、堅牢度が高く、色落ちしにくい染め直しができます。
そして、黒に染めることで、襟や脇の下の汗ジミや色あせをより目立たなくさせます。
染められるものは、天然素材のものです。
・綿(コットン)
・絹(シルク)
・麻(ジュート)
・毛(ウール)
・皮(レザー)
・その他の天然素材
染色をする際に、90度以上のお湯を使うので、素材によっては多少の伸び縮みがあります。
なかでも、毛、絹、麻は、素材によって大きく縮む場合があるので注意しましょう。
また、天然皮革も縮みやすいので、タグに使われている場合なども同様の注意が必要です。
加えて、洋服の布地がひどく汚れていたり、日焼けがしている場合などは、染ムラのようになってしまう場合があります。
このように、洋服は着物と違い、ひとつの洋服の中にさまざまな素材が含まれているので、染め直しをするときには素材の確認をしっかりしましょう。
布地を黒に染める場合の注意点
前項でも少しご紹介しましたが、さらに詳しく見ていきましょう。
ここで注意したいのが、布を黒に染める場合、染められない素材があることです。
当然ですが、防水、撥水加工がされているものは染まりません。
他、昔にはなかった化学繊維がその対象となります。
・ポリエステル
・ポリウレタン
・アクリル
・アセテート
・トリアセテート
・合成皮革
・その他の化学繊維
また、レーヨンやウールは縮みやすいので、依頼するときには注意してください。
一部にレーヨンやウールが使われている場合には、その部分だけ縮んでしまいます。
洋服の素材が上記のような化学繊維でなかった場合でも、縫製している糸が化学繊維でできている場合には、糸は染まりません。
しかし、それがかえって味になる場合もあります。
例えば、ベージュのコートを黒に染めた場合、布地は綿素材なので黒く染まり、縫製糸は化学繊維で黒に染まらなければ、縫い目が目立つデザインに生まれ変わります。
わざと違う色で縫い目を目立たせるデザインの洋服もあるので、かえっておしゃれに感じるかもしれませんね。
天然素材でない布地を黒く染める
これまで、日本独自の染色方法を用いた染め直しについてお話してきました。
ここでは、天然素材の布地でなくても黒に染めることができる場合を見ていきましょう
ある専門業者では、布地を黒に染めることができるのは、次の素材となっています。
・綿
・麻
・絹
・毛
・レーヨン
・キュプラ
・リヨセル
・ナイロン
*ただし、上記のいずれかが30%以上含まれていること。
この条件ですと、かなりいろいろな洋服を染め直しすることができますね。
しかし、染まらない素材が多く含まれていると、色が薄くなったり、霜降り状態になる場合もあります。
やはり、染める前には素材のチェックは重要です。
また、熱に弱い素材が多く含まれていると、縮やシワ、破損する場合があります。
・レーヨン 60%以上
・キュプラ 70%以上
・リヨセル 60%以上
・絹 50%以上
・ナイロン 60%以上
・アセテート 20%以上
・毛 50%以上
・ポリウレタン 10%以上
ここでも、縫製糸はほとんどの場合、染まらないそうです。
また、撥水、防水加工のものも、染め直しはできません。
業者の技術によって変わるところがあるかもしれませんが、目安として参考にすると良いでしょう。
自分で布地を黒に染める
ここまで、専門業者に依頼する染め直しについて見てきました。
しかし、TシャツやYシャツ1枚くらいだったら、自分で染め直してみたいと思う方もいると思います。
これまで見てきた、染めることのできる布地を参考にして、自分で黒に染めてみてください。
【パウダー染料の場合】
1.染めるTシャツなどは前もってきれいに洗濯し、濡れたままにしておく
2.大きめの容器に40度のお湯を入れる
3.指定された量の染料を75度のお湯に溶かし、ろ過して溶け残りをなくしておく
4.3に塩と洗剤を加えてよく溶かす
5.4を2に入れる
6.染めたいTシャツなどを色ムラができないように攪拌しながら、20分ほど浸ける
7.染め終わったら、水が透明になるまでよくすすぎ、陰干しをする
【液体染料の場合】
1.染めるTシャツなどは前もってきれいに洗濯し、濡れたままにしておく
2.容器に40度のお湯を入れ、指定された量の染料を溶かす
3.染めたいTシャツなどを色ムラができないように攪拌しながら、90分ほど浸ける
4.染め終わったら、軽く水ですすぐ
5.色止め用に1リットルに対して酢50mlと塩大さじ1杯を溶かし、30分浸ける
6.染め終わったら、水が透明になるまでよくすすぎ、陰干しをする
布地を黒く染めることで洋服がよみがえる!
洋服をリメイクする方法はいろいろあります。
形を変えて生まれ変わらせる方法もありますが、デザインが気に入っていて、日焼けや汚れ、黄ばみや色あせなどを消したい場合は、「染め直し」でリメイクすることをおすすめします。
布地を黒に染めることで、日焼けや汚れ、黄ばみや色あせは、かなり目立たなくなりますし、デザインを変えることなく着続けられるのはうれしいですね。
また、「染め直し」は技術を必要とするものなので、大切な洋服は専門の業者に依頼することをおすすめします。