街に溢れるオシャレを楽しむ人たち。
その中の一人のはずなのに、手持ちのアイテムでは組み合わせが決まらないと出かけるのも億劫になってしまいます。
かといって、いつもキメキメのブランドコーデでは、自分らしさを楽しむこともできません。
コーディネートの中にパーカーを取り込むことで、肩肘張らないゆるいストリートファッションを楽しむこのができます。
ストリート生まれの自由なコーデ
ストリートファッションは、街に行き交うオシャレな若者たちを中心に生まれるファッションです。
彼らのコーデは、着る人たちを外側から眺めているファッションデザイナーやアパレルブランドの提案するものでなく、時代の中にいる本人が生み出したものです。
そこには彼らの接する時代、社会、文化が反映され、彼らの憧れる生き方が反映されています。
その自由な組み合わせが時代を共有する人たちの共感を受け、支持されることによって、ストリートファッションとして発展していくのです。
共感を膨らませる文化は音楽であったり、スポーツであったり、街であったりもします。
時には常識という枠に縛られた、社会そのものへの反発心であったりもします。
感性を研ぎ澄ましてラップを刻むラッパーからは、自分の主張を受け取って欲しいというメッセージが込められます。
そのベースになっているのは、自分たちの存在を認めさせるために暴力という手段しか持たなかった、黒人たちへの共感です。
ダンサーやボーダーからは、音楽に合わせてスイングすることの楽しさや喜びが伝わります。
動きやすいこと、布地の動き自体が持つ魅力から、そこではパーカーが存在感を増します。
その誕生に共通しているのは自由な発想で、流行のキッカケになるのは共感です。
そして、それらのアイテムをオシャレにコーディネートしたのが、街を彩るストリートファッションなのです。
時代や文化に受け入れられたファッションは、ファッション誌にストリートコーデとして紹介されたり、時代をリードするデザイナーのヒントとしても取り入れられるようになりました。
ストリートファッションの歴史
提供する側ではなく、身につける側の主張を反映したストリートファッションは、時代とともに変化をしてきました。
ストリートファッションを作る共感が時代を動かし始めたのは、1960年代でしょう。
アメリカでは、それまで高級服を身に着けることが社会的な優位を示してきた社会に反発した、ヒッピーが登場しました。
彼らの表現は、宗教として戒律性を強め、保守的となってしまったキリスト教社会へのカウンターカルチャーとして強まりを見せます。
社会規範からの開放と自由を求めた彼らが好んだスタイルは、ロングヘアーにジーンズ、サンダル履きというものでした。
権力による押さえつけに反発した彼らの声は、反戦運動の呼びかけにも発展し、社会性を持ったミュージシャン達との相乗効果で社会的な弱者であった若年層に受け入れられていきます。
同じ頃ロンドンでは、戦後の時代をユースカルチャーが牽引し始めます。
新しさやモダンであることを強調するユースカルチャーの中で、彼らは楽観主義と快楽主義を追い求めたスウィングロンドンというスタイルを確立しました。
スウィングロンドンの中に生きたロンドンっ子たちは、原色を使ったポップなファッションを好み、ボブカットやミニスカートといった象徴的なスタイルを生み出していきます。
新しいファッションカルチャーの発信基地となったロンドンでは、その後、モード系の気取ったファッションに反発するようにロンドンパンクが生まれます。
ロンドンパンクは、良い子であることを否定するように鋲打ちの革ジャンにチェーンを垂らし、髪の毛を立てたパンクヘアをトレードマークにしました。
1980年代に入ると、G-1などのミリタリーを取り入れたアメカジが生まれます。
アメカジでは、それまでの社会への反発を強く押し出した主張の現れではなく、個々が自分なりのオシャレを自分に似合うようにコーディネートするようになります。
ストリートファッションの原型です。
ストリートファッションが受け入れられるようになる1990年代に入ると、自己表現を始めた若者たちを応援するようにストリート系のブランドが次々に名乗りを挙げるようになります。
ストリートに持ち込まれるファッションは、自分が表現したい文化に合わせてアイテムを組み合わせる時代へと進化したのです。
街にはTシャツにデニムを合わせたサーファーファッションが持ち込まれ、パーカーを着たスケートボーダーがそのままの恰好で行き交うようになりました。
自分の主張を体現するように、黒ずくめのラッパースタイルもストリートは受け入れるようになりました。
そして現代、その文化の垣根さえ超えて自分なりのコーデを楽しむストリートファッションの時代になっています。
ストリートコーデの生まれる場所
ストリートファッションに取り込まれた魅力的なアイテムは、そもそもストリートで生まれたものばかりではありません。
それぞれのアイテムは、独自の文化の中で生まれ、文化を共有したグループの中で共感とともに進化します。
むしろ、ストリートで生まれるのはそれらのコーデである場合が多いのです。
最も前衛的なアイテムを生み出しているのは、服飾系の学校のようです。
彼らは自分の身につけたいもの、ストリートに存在して欲しいものを、商業目的から離れた視点で創造します。
彼らの生み出す帽子、ブラウス、ジャケット、ボトムスといったアイテムには、アシンメトリーであることすら嫌わずに、彼らの表現したい主張が詰め込まれます。
作った本人がモデルとしてストリートを闊歩する姿には、他のファッションと一線を画す印象を覚えることでしょう。
ヒップホップは、ストリートファッションを作る上で避けることのできない文化です。
ニューヨーク・ブロンクスのブロックパーティで生まれたヒップホップは、ラップ、ブレイクダンス、グラフィティを構成要素としています。
ラップミュージックに乗せたブレイクダンスは、パーティーへの参加者たちに開放と躍動の機会を与え、やがてブロックごとの対決へと発展していきました。
仲間たちを代表して戦うラップは、やがてその対象を社会への問題提起と広げ、慰めや励ましといったメッセージ性すら持つようになりました。
そこに込めるラッパーの主張が共感を呼ぶことから、ファッションにも強く影響を与てえいます。
抑圧された時代を生きていた黒人たちの主張の形が、黒を基調にキャップを被り、光り物を多用するという形で反映され、B系ファッションを確立しました。
身体に密着する服装を嫌う彼らには、ルーズなボトムスにスウェット地のトレーナーやパーカーという組み合わせが受け入れられます。
ヒップホップのリズムに合わせたブレイクダンスは、その動きのコミカルさから場を盛り上げるのに一役買っていました。
盛り上がるに連れて、そのダンスのレベルの高さを競うようになり、アクロバティックな動きは進化を続けます。
動きやすい普段着でもあったアームの広めのパーカーが、いつしかヒップホップダンスの定番トップスになりました。
ヒップホップミュージックに乗せて技を競い合うのはスケートボードです。
競技中に流れるヒップホップは、観戦者の心を高揚させ、会場の空気を競技者が繰り出す技への期待へと昇華させます。
スケーターの戦闘服も、必然的にヒップホップファッションになります。
その方向性は、競技者によってラッパーに近かったりダンサーに近いものであったりします。
流行の始まりの頃にはスケートボーダーの耳当てがDJのヘッドフォンのようだったこともあり、B系ファッションに近い印象でしたが、余計な光り物を避け、パーカーのような動きやすトップスはダンサーにも通じるところです。
ストリートのパーカーコーデ
ヒップホップファッションにはマストとなったパーカーですが、もとは倉庫で働く労働者のための作業着だったものを、スポーツ衣料メーカーがスポーツウェアとして売り出したものです。
それだけに、パーカー自体は汗が似合うトップスとして仕上がっています。
一方、ストリートにはキレイ目のコーデが似合います。
前置きが長くなってしまいましたが、ストリート向けのパーカーコーデをいくつかご紹介しましょう。
動きやすさと吸汗性を考えたパーカーでも、黒のジャストサイズのものを選べば運動着のイメージから遠ざけることができます。
ボトムスに細身の黒を持ってくれば、全体をシャープにし、スタイリッシュなシルエットの完成です。
黒のパーカーにベージュのステンカラーという組み合わせには、アンクル丈のパンツ合わせることでアクティブ感を出すことができます。
合わせるシューズで、カジュアルにもモダンクラシックにも振ることができるコーデです。
ゆったりしたグレーのスーツのインナーとしても、黒パーカーは大人の雰囲気を壊すことはありません。
足元には白のスニーカーを合わせ、活動的な印象と清潔感をプラスしましょう。
チェスターコートに合わせた黒パーカーは、コートが持つフォーマル感を砕いてくれる組み合わせです。
その分、黒のボトムスで落ち着いた色合わせができれば、都会的な大人の休日を演出することができます。
プルオーバーのパーカーは、更にコーデを垢抜けさせます。
腰の高さに切り替えを作らないロング丈のパーカーは、全体をモノトーンで纏めることで都会的な印象に。
重目になった印象は、シューズにスニーカーを合わせることで軽快感を取り戻しておきましょう。
ジップアップを持たないプルオーバーは、前身頃全体がキャンバスになります。
大きなキャンバスプリントで、オシャレのセンスをアピールするのも楽しい使い方です。
トップスに視線を集める分、ボトムスはタイトなものを選びたいところです。
プルオーバーのパーカーは、その形状自体が垢抜けています。
選択は黒だけでなく、赤や黄色といったビビッドな色使いもプルオーバーならではの楽しみ方です。
色々と使えそうなパーカーですが、いざという時になって相性の良いアイテムが見つからないこともあります。
少し反則気味になりますが、マネキン買いという手もあります。
パーカー選びのポイント
機能性を重視するならパーカーはカタログスペックで選んでしまっても良いのでしょうが、ファッションアイテムとして考えると、そうも行きません。
ストリートファッション向けのパーカーとして、選ぶ時に注意しておきたいポイントをご紹介しておきます。
ストリートファッションで失敗する1つの原因は、子供っぽいコーディネートを作ってしまうことです。
軽快感や開放感の表現を間違えてしまうと、幼さが残る仕上がりです。
ブランドロゴが目立ちすぎるパーカーを着ているのは、スポーツ少年に見えてしまいます。
多色使いの派手なパーカーは、落ち着きが無く、子供服と印象を同じにしてしまいます。
色使いがまとまらない時には、黒を選んでおきましょう。
黒のパーカーは大人びた雰囲気を醸し出すだけでなく、他のアイテムとの相性も良く、失敗しにくいです。
次に失敗につながるポイントは、ダボダボでルーズなシルエットです。
ストリートにヒップホップが進出したころには、B系ファッションの上下ダボダボが流行りました。
しかし、これはその時代に新しかったからこそオシャレだったのであって、今ではその優位性はありません。
ストリートに持ち込むパーカーは、ジャストサイズを選びましょう。
パーカーを取り入れて自分だけのコーデを
ストリートファッションは、デザインの提供者が作るものではありません。
その言葉が生まれた頃は、時代背景が文化を作り、その文化を共有する若者たちの共感がそれぞれの時代を作るストリートファッションを作り出してきました。
また、新しいファッションを生み出すような、若者による大きなムーブメントもありません。
主張と感性は自分の中にあります。
自分の共感する対象は時代の中にあり、それを示すアイテムは、いたるところに存在しています。
それを通して自己表現できるのが、ストリートファッションです。
色々なアイテムを組み合わせて自分だけのコーデを作るのがストリートファッションの醍醐味です。
懐の広いパーカーなら、受け入れるアイテムの幅も広がります。
ニットキャップもアポロキャップも、キレイ目の大人コーデならキャスケットを合わせることもできます。
ジャストサイズのパーカーなら、アウターも選びません。
黒の統一コーデなら、編上げのブーツだってチョイスに入ってきます。
コーデが決まったら、合わせるリュックを選ぶのも楽しくなります。
なりたい自分をイメージして、自分だけのストリートコーデを作ってみましょう。
ストリートに出てみましょう
コーデを作るにも、そのゴールが見えていなければ始まりません。
ファッション誌を参考にしても良いでしょうし、ネットで探してみても良いでしょう。
それでも一番参考になるのは、ストリートに出て自分の目で見て感じることです。
そこでは、それぞれの主張を持った人たちが思い思いの表現をしています。
自分がなりたいと思えるファッションに出会えるかも知れません。