パーカーとアウターの組み合わせ、フードの取り回し

おしゃれアイテムとしてのニーズよりも、気軽さや便利さで受け入れられているパーカー。

パーカーと言われて、フードの付いたスウェットを思い浮かべることが多いのではないでしょうか。

実は、パーカーの起原はフード付きのアウターだったのです。

今回は、パーカーについて整理してみましょう。

パーカーのことを知れば、きっと、おしゃれの幅が広がるはずです。

パーカーとフードの関係

フード付きのアウターとして思い浮かぶのは、モッズコートやダッフルコート。

そして、その下に着るフードの付いたスウェットがパーカーと思いがちです。

しかし、実はパーカーというのは、フードのついたトップスの総称で、フーディーとも言われるものです。

そう、山登りに使うマウンテンパーカーやアノラックパーカー、モッズコート等が、本来の姿だったのです。

スウェットのパーカーは、寒冷地の労働者のために作られたもので、寒さ対策の工夫が集められたものでした。

それがファッションとして受け入れられるようになったのは、1970年代のヒップホップの流行によるものです。

労働者階級の彼らがストリートで繰り広げるヒップホップは、既成概念の外に出たい若者たちから歓迎され、その象徴のようにパーカーが広まっていったのです。

それが、日本に広まったのは1990年代、おりしもキレカジブームの頃です。

金ボタンの紺ブレの下に着たスウェットのパーカーは、スウェットなのに育ちの良さを感じさせるものとして、キレカジの定番の着こなしのひとつになりました。

寒さ対策のために付けられたフードは、おしゃれ着としては被らないのが基本です。

機能性よりも、オシャレの為の装飾性に重きが置かれています。

パーカーを取り入れた着こなしをオシャレに見せるには、あるルールがあります。

それは、カジュアルすぎないことです。

カジュアルすぎると、本来の役割だった労働者用のイメージが顔を出します。

体格が華奢だと、そこにすら至らずに子供っぽくさえ見えてしまいます。

簡単にオシャレを作るには、知性的なコーデの中に組み込むこと。

キレカジを頭に入れて組み合わせると、パーカーも知性的で大人っぽいコーデを作ることができます。

パーカーの種類

パーカーを使ったコーデのために、代表的なパーカーの種類をおさらいしておきましょう。

【プルオーバーパーカー】

フロントにジップアップなどが付けられておらず、前を開けられないスポッと被って着るタイプのパーカーです。

厚手の生地のものが多く、温かみのある印象から、秋冬の定番アイテムとなっています。

アウターとしてよりもインナーとしての使い勝手が良いため、外出時にはアウターを重ねるだけで済むという手軽さも見逃せません。

【ジップアップパーカー】

フロントにジップアップを持っており、前を開けたり締めたりできるパーカーです。

プルオーバーパーカーに比べて薄手の生地で作られているものが多く、オールシーズンに対応させることができるアイテムです。

脱ぎ着がしやすくアウターとしても使いやすいだけでなく、前を開けた状態と締めた状態で雰囲気が変わるのもジップアップパーカーの特徴です。

最近では、ジップアップタイプにとどまらず、上下両開きのダブルジップアップや、ボタンアップのものなども販売されています。

コーディネートの幅を広げることのできるパーカーです。

【ハーフジップパーカー】

フロント部分に、上半分だけのジップアップが施されているパーカーです。

丁度、スウェットのVガゼットの部分がジップアップに取り替えられたようなかたちです。

このジップアップは大きな頭を通すためにある、と言うよりは、首元にアクセントを付けられると解釈した方が良さそうです。

首元にはジップアップが欲しいけれど、手を温めるための『マフポケット』を左右繋がった『カンガルーポケット』にしたければ、選択肢はハーフジップということになります。

【ボリュームネックパーカー】

最近多く見かけるようになった、首周りのボリュームを増したパーカーです。

ジップアップの場合はインナーの襟を活かす形状のものが多く、プルオーバーだとネックウォーマーのように暖かさを確保するものが多くなります。

どちらも、小顔効果に期待出来ます。

【マウンテンパーカー】

スウェット地のパーカーばかり思い描いていると忘れられがちですが、もともとのパーカーはフード付きのアウターのこと。

本来の役割のまま現代に残るスタイルのひとつです。

流行りに関係なくオシャレとして取り入れやすいのは、黒でシンプルなデザインです。

少しオーバーサイズ気味のものを選んでおけば、アウトドアだけでなく街着としても幅広く使うことができます。

パーカーに合わせたいアウター

それだけでも使えるパーカーですが、アウターと組み合わせることで、もっとオシャレを楽しめるようになります。

ここでは、インナーとしてパーカーを使うときに、合わせやすいアウターについてご紹介します。

【ハーフ丈のコートでオシャレに】

最初のお薦めはフォーマル度が高いアウターの代表格、チェスターコート。

緩みと格式の足し算は、パーカーの露出が低いことから意外にも相性の良い組み合わせです。

パーカーのフードが、スカスカの首周りにポイントを作ることで重心が上がり、チェスターコートの作る上品なシルエットを壊しません。

流行りのミリタリージャケットも、スウェットパーカーには相性の良いアウターです。

ミリタリージャケットと組み合わせるだけでトレンド感を手に入れることが出来ますが、気を抜くと崩れ過ぎになりかねない組み合わせでもあります。

ラフに寄りすぎたトップスの分、ボトムスとシューズの組み合わせで節度を加えるようにしましょう。

ピーコートとの組み合わせもまた、プレッピーやアイビーの定番の組み合わせです。

この組み合わせから学生らしさを消せるかどうかも、ボトムスとシューズの工夫次第ということになります。

【ロングコートですっぽり包む】

パーカーとの組み合わせの鉄板と言えばトレンチコート。

トレンチコートの持つ硬質感をパーカーが解いて、中和します。

ステンカラーコートとの組み合わせは、トレンチコートとの場合よりも軽さが演出されます。

インナーとして着込んだパーカーは思いがけず膨らみがち、アウターにするステンカラーには、余裕のあるサイズを選ぶのが無難です。

濃色のロングコートと組み合わせれば、パーカーの柔らかさと、ロングコートがスッキリしたシルエットの両方を手に入れることができます。

【ショート丈で可愛く】

Gジャンとの組み合わせは、硬さと柔らかさの足し算。

首元を埋めるパーカーのフードが、かわいらしさを引き立ててくれます。

ボアブルゾンとの組み合わせは、柔らかなの掛け算。

パーカーを短めの丈のボアブルゾンで包むことで、ふわふわの女性らしさに可愛らしさも加わります。

アウターとして使うパーカー

フードの付いたスウェット地のパーカーは、単独での利用やインナーとしての出番が多くなります。

ここでは、アウターとして作られたパーカーの幾つかにも焦点を当ててみたいと思います。

【マウンテンパーカー】

登山用に開発されたマウンテンパーカーは、防風・防寒性に優れたアウトドア向けのパーカーでした。

リュックを背負ったままで使えるポケットの特徴的な形状や、腕を動かしやすいラグランスリーブなどが、オシャレポイントとして受け入れられるようになりました。

最近では『山ガール』の流行も手伝って、ファッション性を優先したレディース製品も幅広く展開されています。

黒のシンプルなデザインのマウンテンパーカーは、タウンユースでもオシャレを取り入れやすいアイテムです。

【アノラックパーカー】

アノラックパーカーもまた、起原は登山用のウェアです。

マウンテンパーカーとの大きな違いは、フロント部分が繋がったプルオーバーになっていることです。

ジップアップによって前を開くことができるマウンテンパーカーに対して、アノラックパーカーは被るように着ます。

プルオーバーのパーカー特有のカンガルーポケットは、使い勝手だけでなく可愛さにも繋がりますし、薄手の素材がスポーティなコーディネートにも合わせられます。

【モッズコート】

モッズコートの起原は、イギリスの労働者層の若者たちです。

彼らは、スクーターを移動の手段として選び、深夜営業のクラブに集まってダンスに興じたりその衣服を見せ合ったりしていました。

そんな彼らが愛したアウターであった米国地上軍の極寒防寒衣料の軍用パーカが『M-51』であったため、モッズコートと呼ばれるようになりました。

全てを包み込んでしまうモッズコートは、その色やフィッシュテールに代表される特徴的な形と共に、個性的なファッションのアイテムとして受け入れられています。

パーカーとアウターのダブルフード

インナーとアウターの両方にパーカーのようなフーディーを重ねると、フードが2つになってしまいます。

この2つのフードは、その扱い次第でダブルフードの成否が分かれます。

いい加減に被せてしまうと「ダサい」と評価されてしまうダブルフードも、組み合わせや重ね方に気を付けることで、オシャレなコーデになるということです。

一つ目の重ね方としては、三角に潰したフードを重ねる方法ですが、フードの厚みを抑えられないと、ボリュームだけが増して野暮ったくなってしまいます。

次に、アウターのフードの中にインナーのフードを重ねる方法です。

パーカー自体がルーズな印象を持っているので、いい加減に重ねるよりも縁の余りが均等になるように合わせてしまった方がオシャレになります。

インナーとアウターの生地や色、柄の違いがコントラストになります。

絶対にやってはいけないのは、だらしなくフードをバラバラにしておくこと。

インナーのフードをアウターの背中にしまってしまのも、ダブルフードがデメリットにしかなりません。

春はダブルフードパーカーで

ダブルフードを楽しみたい人たちにとって、悩みのタネはアウターとの重ね着による着ぶくれです。

その悩みは、ダブルフードパーカーで解決することができます。

ダブルフードパーカーは、1枚のパーカーにフードだけが2枚になっているパーカーで、見た目には2着を重ね着しているように見えます。

素材や色、柄が異なった組み合わせを選ぶことで、2枚のフードが活きてきます。

コントラストを高めれば、それだけオシャレが楽しめますが、組み合わせが固定してしまうのが残念なところです。

フードの取り外しができるタイプのものもありますので、シングルとダブルを使い分けるという楽しみ方もできます。

また、フードの表地と裏地で色違いや柄違いを作っているものもあり、実際にはシングルフードであっても、見た目だけダブルフードというパーカーもあります。

フードを裏返して、裏地のアクセントを強くしている使いこなしも、よく見かけるファッションです。

パーカーは便利なアイテム

一口にパーカーと言っても、そのルーツによって様々なパーカーが存在します。

アウターとして作られたパーカーやインナーとして作られたパーカー、それぞれが出番によって機能的な特徴を持っています。

しかし、タウン着として考えるなら、見た目や使い勝手で選んでしまって良いのだと思います。

自分なりのパーカーを自分らしく着こなして、オシャレの幅を広げましょう。