ワイシャツについている後ろタックの種類と必要性をご紹介

皆さんは、ワイシャツやシャツブラウスの後ろにタックがあることをご存知ですか?

タックには、背中の中心についているものと、左右に外側に向いてついているものがあります。

後ろについているワイシャツのタックは何のためについているのでしょうか。

タックが一つついているシャツと、二つついているシャツでは、どう違うのでしょうか。

タックの必要性が分かれば着心地などをより追求でき、自分に合った快適なシャツが見つけられるはずです。

今回は、シャツについている後ろのタックについてのご紹介します。

シャツの後ろにタックがあるのはなぜ?

人間の身体は立体的で、全体に丸みがあります。

それは、肩から背中にかけても同じです。

着物では、この丸みを体に添わせるように巻きつけて着用します。

洋服は、服全体のシルエットが身体の線を見せるように作られています。

そこで、この丸みをきれいにみせるためにダーツを取ります。

ダーツは、肩の丸みや胸の丸み、胸とウエストの周経の違い、ウエストとヒップの周経の違いによる段差をきれいに出すために用いられる手法です。

しかし、ダーツは必ずしもとらなくてはいけない、という事ではありません。

また、ダーツをとる場所も、肩や胸、ウエストばかりというわけではありません。

例えば、ダーツの場所を胸ではなく脇に移したり、肩のダーツを後ろ中心に移したりします。

また、形もダーツとは限らず、ギャザーや切り替え線に変えることもあります。

その一つの手法がタックです。

洋服はダーツを取ることで、身体にピッタリと添うように出来上がります。

しかし、服全体にゆとりをとりたい、体型をカバーするような服に仕上げたいときはギャザーやタックに変えます。

既製服のシャツは、必ずしも一人の人が着るために縫製されているわけではありません。

近いサイズの複数の人が着るために作られています。

そこで、ゆとりのあるタックを使っていることが多くあります。

シャツの後ろにタックがあるのはこういった理由です。

シャツの後ろタックは動作に必要

シャツのタックには、後ろ中心に箱ひだのように作る1本タックと、肩ダーツの位置を下にずらした、2タックがあります。

どちらも男性、女性関係なく使われている手法です。

後ろタックは、一度肩から8cmくらい下がった位置に切り替え線を取り、その下につけることが一般的です。

肩ダーツは後ろ身頃の肩位置に直接作りますが、タックの場合は一度切り替えをつけてからその下に取ります。

こうすることで、肩幅と背幅にゆとりを入れることができます。

私たちは、服を着た後ただじっとしているわけではありません。

身体に添うように作られた服は、じっとしていればきれいに見えるかもしれませんが、動くときには窮屈になってしまいます。

自分の腕を前で組んだり、伸ばしたり上に上げたりといった動作を無意識にしますよね。

このときに、背中部分の筋肉が伸びていることを感じると思います。

筋肉が伸びたときには、衣服そのものも伸びます。

そのため、衣服にもゆとりが必要です。

ワイシャツやシャツブラウスの生地は、綿を中心とした繊維を平織りにしたものです。

平織りの生地はそのままでは伸びません。

そこで、後ろ部分にタックを入れています。

シャツの型紙で後ろタック「センターボックス」を入れる

それでは、後ろ中心に入っているタックと、左右に入っているタックは、どのような違いがあるのでしょうか。

後ろ中心に入っているタックは「センターボックス」と言い、シャツを作るときに中心線でゆとりを入れます。

シャツの型紙は、原型を元に展開します。

それでは、後ろ中心にタックを取ったときの型紙の書き方をご紹介しましょう。

【書き方】

①まず原型を書いたら他の紙の上に原型を置き、書き写します。

②裾と脇にゆとりを入れます。

裾は原型よりも20cmくらい出します。

このときに出す長さは、ウエストラインとヒップラインの位置の高さで変えて生きます。

③脇は下に2cm下げて、外側に2cmほど出します。

これが、袖周りや脇のゆとりになります。

④次に、肩ダーツの先よりもさらにウエストに向かって1~2cm下がったところで、背中の切り替え線を引きます。

切り替え線は、バスとラインに平行になるようにします。

切り替え線でシャツの型紙を切り、肩ダーツ部分をたたみます。

このとき、紙が自然となるようにダーツの下に切り込みを入れます。

⑤切り替え線で切った型紙の下部分にタック分を取ります。

タックの幅の2倍分(2~3cm)型紙の後ろ中心を出します。

これが、後ろタックになります。

左右に入れるシャツの後ろタック

後ろタックを左右に入れるときも、原型から裾や脇を出す工程はほぼ同じです。

左右に入れるときは「サイドプリーツ」と言い、後ろ中心ではなく肩ダーツの位置で型紙を開きます。

それでは、サイドプリーツのタックを入れるときの型紙の書き方です。

【書き方】

①型紙の書き方は、後ろ中心にタックを入れるセンターボックスの型紙の①~④までと同じ工程を行います。

②切り替え線で型紙を切る前に、切り分ける下の部分にも肩ダーツの位置を分かりやすく入れておきます。

③切り分けた下の型紙を、肩ダーツに位置で縦に切り分けます。

ここで広げた分が、左右のサイドに入るタックになります。

広げる量は、タックを入れる分の2倍にします。

④縫うときに、この場所で外側に折山を入れてタックを取ります。

後ろ中心に入れるセンターボックスのタックは、箱ひだのようにタックを1つ入れます。

一方、左右のサイドにタックを入れるサイドプリーツのときに入れるのは、片ひだのタックです。

ちょうど肩甲骨がある場所に、右と左に2つのタックを入れます。

男性のワイシャツだけでなく、ユニセックスのシャツや、女性が着るスポーティなシャツでセンターボックスのタックが使われています。

肩や腕を動かしやすくするためのシャツの後ろタック

センターボックスとサイドプリーツでは、名前と入れる位置の他に用途や着心地も違います。

一般的に着られているワイシャツの背中は、サイドプリーツになっていることがほとんどです。

サイドプリーツは、レギュラーカラーやワイドカラーと衿型のワイシャツでよく使われています。

左右にタックがとってあることで肩回りや腕周りの動きが良くなり、大きな動作がしやすいのが特徴です。

一方、センターボックスはボタンダウンシャツやトラッドタイプのシャツで使われています。

同じワイシャツでも、サイドプリーツよりもカジュアルに着ることができるワイシャツに使われます。

サイドプリーツのシャツは首回り、肩回りが動かしやすく作られています。

このように、同じ後ろのタックでも用途や着心地が違います。

後ろ中心や背中の両サイドにタックを入れることで、背中の筋肉の周辺にゆとりができ、さらに脇の幅にもゆとりができます。

腕を上に上げたり前で組んだりするときに背中のタックが広がり、腕や肩、首回りを動かしやすくなります。

肩に筋肉がついている体型の良い人は、タックを多めに入れてさらにゆとりを入れています。

後ろにタックを入れないシャツ

近年の日本人の体型は、大柄で体格の良い人が増えています。

そのため、今までの普通体型と言われていたシャツが売れ残り、大きなシャツを出すとすぐに完売してしまうそうです。

体格が良い人を想定するときは、背中にタックを入れることでゆとりのあるシャツを作ります。

しかし、細身で小柄な人のためのシャツでは、「バックダーツ」といって、タックではなく背中のサイド部分にダーツを入れてウエストを絞っているものもあります。

細身の人はもちろんですが、より細身に見せたい人にも人気のシャツです。

私たちはワイシャツを購入するときに、デザインだけでなくしっかり着れるかどうかの基準、首回りと腕の長さを見て選びます。

しかし、なにも施されていない場合は体格が良い人では窮屈で、細身の人にはぶかぶかになってしまうことがあります。

そこで、バックダーツの入ったワイシャツでは、「すっきりスタイル」「細身体型」などの表示がついていることがあります。

それでは、細身でないとバックダーツのシャツを購入することができないのか、というとそうとは限りません。

最近は、平織りの綿のワイシャツよりも、化学繊維が入った混紡の生地が増えています。

また、生地の中にはストレッチするものもあり、バックダーツのシャツを着ても決して窮屈にならないというものもあります。

女性のシャツブラウスでは、タックよりもバックダーツの方がよく使われています。

「後ろにタックが入っていると、ワイシャツがぶかぶかで自分の体型には合わない」「ゆとりあるワイシャツよりも、着ることでより細身に見せたい」という人は、バックダーツのシャツを選んでみましょう。

着心地がが変わるシャツのタック

シャツと後ろタックについてのご紹介でした。

ワイシャツやシャツブラウスを購入するとき、今まではさりげなく選んでいませんでしたか。

パッと見や、生地のデザインだけで選んでいませんか。

タックの位置や形が違うと、着心地は違ってきます。

シャツを購入するときはきちんと試着をして、自分の身体や動きにあったタックの入っているシャツを選んでください。